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逃げ場のないワンルームマンションで小室夫妻が直面する「厳しい現実」と、「冷めていく愛」の行方
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218 名前:つ:2022/10/09 12:43
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図版LXXXIX—F.B.とA.H.W.
「図版LXXXIX」の図1、3、4を描いたR.M.は、ウィリアム・カーマイケル・マッキントッシュ(1838-1931)の妹、ロベルタ・マッキントッシュ(1842-1869)であった。それでは、図5を描いたF.B.と図2を描いたA.H.W.は、それぞれどのような人物であったのか。半断面図に各器官が細かく書き込まれている図5は、「F・ブキャナン女史の図より」と説明されているため、引用した図であると推測できる。F・ブキャナン(F.B.)は、図5で描かれているStreblospio shrubsoliiの命名者でもある、動物学者フローレンス・ブキャナン(1867-1931)のことである。ウィリアム・マッキントッシュは、1900年に出版された『総説・英国の環形動物 第1巻第2部』にて支援者の名前を列挙し感謝の意を述べているが、ブキャナンもその中に名を連ねている。図2を描いたA.H.W.ことエイダ・ヒル・ウォーカー(1879-1955)は、『総説・英国の環形動物』のために数多くの図版を描いた。セント・アンドリュースに拠点を置き美術教師をしていたこと、地元の風景画を描いていたことなどが知られているが、詳しいことはあまり分かっていない。どのような経緯でマッキントッシュのために絵を描くことになったのかも不明なようである。ただ、マッキントッシュの故郷がセント・アンドリュースであることが関係しているのかもしれない。
秋篠宮眞子(東京大学総合研究博物館特任研究員)
図版LXXXIX—R.M.
この色鮮やかな図版は、1915年にレイ・ソサエティより出版された『総説・英国の環形動物 第3巻第2部』に収録されている、「図版LXXXIX」である。セント・アンドリュース出身の海洋生物学者、ウィリアム・カーマイケル・マッキントッシュ(1838-1931)が中心となって書かれた同書は、環形動物のなかでも多毛類についての図版と解説をまとめたものである。本図版には5匹の多毛類が描かれているが、これらは1人の画家によるものではない。左下にイニシャルで小さく作者が記されており、図1(1番下), 図3(1番左), 図4(1番右)をR.M.が、図5をF.B.が、図2をA.H.W.が描いたと読み取れる。R.M.は、ウィリアム・マッキントッシュの妹、ロベルタ・マッキントッシュ(1842-1869)のことである。ウィリアムは妹の絵の才能をたいへん誇りに思っており、環形動物の絵の展示を開けるよう手配したこともあったという。ロベルタが残した写真帖には、顕微鏡を前に作業する兄を描いたページがある。研究に集中する兄の姿は、その研究を支えていた妹にとってお馴染みの光景だったのであろう。ロベルタは、動物学者アルベルト・ギュンター(1830-1914)と結婚し1868年にロンドンへ引っ越したが、すぐに若くしてこの世を去った。1873年に出版された『総説・英国の環形動物 第1巻第1部』の冒頭には、美しい飾り文字で、「本著のアーティストであり同志かつオブザーバーであった私の妹、R.の思い出に捧げる」とある。
秋篠宮眞子(東京大学総合研究博物館特任研究員)